青と口笛に寄せられて


時には外国人もやって来る犬ゾリ体験。
基本的に英語とフランス語を話せる人以外はお断り、っていう注意書きをホームページや広告にも載せているようだった。
一体誰が話せるのかと思っていたら、それらの言語を操れるのは啓さんだということが発覚した。


「カナダに5年行ってたって言ったしょ。日常会話程度なら出来るんだ」


と普通に話しているからビックリした。


彼は独特の色味のアッシュグレーの髪色をしていて目の色も青いけど。
中身は完全な日本人。
北海道弁丸出しの道産子なのだ。


そうそう、北海道弁と言えば。
1ヶ月でしょっちゅう使う方言には慣れた。






ある日のリビングでの泰助さん。
みんながいる中で暇そうにしている私に声をかけてきた。


「深雪ちゃん、そこのゴミ投げといてくれる?」

「はーい、分かりました。………………ん?」


テーブルの上に丸まったチラシが2つ。
それを手に取って少し考えた私は、えいやっ!とその辺の床にゴミを投げた。


「えっ!?深雪ちゃん、ちょっと!」

「なんですか!?」

「投げてって言ったじゃない?」

「……投げました……」

「………………」


一瞬にして大爆笑に包まれる大きなリビング。
目を点にして立ち尽くす私に、裕美さんが涙混じりで笑いながら教えてくれた。


「あのねぇ、こっちの地域では『捨てる』を『投げる』って言うんだわ。あー、笑ったわ」


マ、マジですか……。


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