正義の味方に愛された魔女1
へなへなと座り込みそうになる私を支えてくれて、取り敢えず車のシートに座らせてくれた。



体格がいいので、抱えられると安定感があり、落ち着きを取り戻すことが出来た。



……あぁ、そういうことかぁ解った、お店に何度も来てた理由。

それと、今晩も待ってた理由。

荒川さん、私に手伝いを頼みたかったんだ。






「悪い……脅かすつもりはなかったんだ」

《良くあんなデカイ声、出たな……普通、とっさに声って出ないぞ……》



「ごめんなさい。不審者と間違えました」



「……ん~、何だっけ……?変質者に痴漢に人さらいに、あと何て言ってた?」



「えっと……あの……す、ストーカー……だったか…な?

いや!いやいや荒川さんはストーカーじゃないよ!

最近店に良く来てくれていて、お茶飲んで話したり、何をするでもなく私の様子を見ていたり……何がしたいのか分からなくて不気味、っていうか。

この人、何しに来てんのかなー?とは思ってたけど」



「あの、それ立派な不審者扱いなんだけど。ひどいな百合さん。

だいたい、俺ストーカーどころか、スカウトしたくて来てたんだよ。

いきなりそんな事言われても受けてくれないと思って、まずはお友達から?と」



「まずはお友達から、とかって……告白の返事じゃないんだから。



あぁ………スカウトね。さっきも視えたんだけど、
んー、いや、荒川さんが考えるそれって、犯人とか容疑者に私が触るんでしょ?

何だか、危ない予感しかしないんだけど」



「危ない予感がしてたのはこっちだよ。

こんなに遅くなるまで一人で出歩いて。

この辺の裏道、人通り少ないから、それこそ不審者に気を付けた方がいい」



「お得意様のお宅に、ボランティアの人生相談モドキに、たまに行くの。

お店終わってからだと遅くなるのは仕方がないよ」



「そうか、やっぱり百合さん、人のために活動してたんだ、いや、そう思ってた。

でも流石に口が固いや。色々聞いてもさらっとしか答えてくれない、信頼して頼めるよ。

俺に力貸してくれたら、送迎付で安心だよ?

なんなら食事付で」



「カツ丼?」



「…ぐっ…何それ、いつの時代のドラマ?

しかも百合さんがそれ食う立場じゃないし。

手伝い頼んだ日、夕飯とか。

あ、いや、お洒落なフレンチとかじゃなくて悪いけど」



「フレンチ~?そいうのって、クリスマスや誕生日や何かのお祝いの時に、好きな人を誘うんじゃない?

プロポーズするのに予約したりさ。

私には、なんかもう、縁遠いなぁ……」



「百合さんって、結構ロマンチスト?
思い描く内容が女の子だよね。
なんか可愛いねぇ」



「か……。

あのぉ、今、幻聴が……。

おばさんをからって遊ばないでよ恥ずかしい、いじめるなぁ!」



「じゃあ、いじめないから力貸して?俺いつも立ち会う、危険な目に遇わさないから」



肩に置かれた手から流れ込む気持ちと、荒川さんの言葉は、
私が承諾するのに充分過ぎる、強さと安心感があった。





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