正義の味方に愛された魔女1
ふて腐れて歩いていると、意外な人に出くわした。



「百合さん!



……やっぱり、百合さんだ。

お洒落して……デートだった?

どうした?怖い顔して…喧嘩でもした?」



「あーっ!荒川さんだぁ。

今、帰り?

こんな時間にこんなところで会うなんて、奇遇だね。



デートの相手なんていないし、喧嘩もしてませんよーだ!



沙耶ちゃんの行きつけのバーに連れてってもらってね~、
イケメンのマスターにかまってもらっちゃった~。

それでね、いい気分で帰るとこだったのにね、
さっきそこでデロンデロンのオヤジに絡まれたの。



そしたら、今度はイケメンの刑事さんとばったり会っちゃった。



……正義の味方、登場~!
……って、遅いよぉ荒川さん」



《へー。
酔った百合さんはじめて見た。
貴重だ……》



「だって、魔女が一人で撃退したんだろ?
なら俺はおよびでないさ。



なぁ、ちょっと。
イケメンのマスターがいるバーって、今度俺も連れてってくれない?」



「え?いいけど、イケメン好きぃ?
あー!荒川さんがずっと独身なのって、もしかして男の人が『好きなわけないだろ!!』」



腕、掴まれちゃった。

……でもなんにも視えないのよね、今は。

荒川さんに触れてるのに視えないなんて、なんだか変な感じ……。



《俺はノーマル!
バーのマスターなんかに取られてたまるかって。



酔ったらこんな感じか……やっぱりこの人、なんか可愛いよな……。

これで10コも年上なんだよなぁ。



………好きだな………》



「今、視えないんだよね、百合さん」



「そう。このリミッター、省エネなの。
少しの量で大きな効き目があるんだよ?



こうやって触っても何も視えないなんて、変な感じだけどね、
これが普通なんだよね」



「ふ~ん……視えないのか。
そっかそっか……」



「………何?何か、よからぬこと考えてる?
イヤラシイ想像しないでね?



早まるな、龍二!対象者の歳を考えろ!!」



「ぶっははは!!百合さん、最高だわ」



………いい気分を取り戻してくれた荒川さんに、
ありがたく、家まで送ってもらったのだった。




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