正義の味方に愛された魔女1
荒川さんは、警察にボランティアを依頼される時に来てくれるアラフォーのイケメン刑事さん。



かれこれもう10年来のお付き合い。

何年か前に捜査一課の課長さんに昇進して、おかげでボランティアの依頼をし易くなったらしい。

私の力のよき理解者で、頼れる男。
なのにいまだ独身なのは、どうして?



ずっと前に、ちょっとだけ視えた心に……私が居たことがある。

暖かさと優しさにふんわり包まれた私が。



それはまさに……い、いやいやいや!



自意識過剰になりそうな要因に、うかつにも一瞬キュンとした。

おばさんでもキュンってするんだな、なんて他人事みたいに思った。



荒川さん、それはきっと一時の気の迷いですよね?



でも時々、体がかすって、視えたり聴こえたりする心がずっと変わらない。

気の迷いが何年も続いてる。

触れる度に伝わるそれが強くなっている様な気が………。



もしかすると、本当に、それは恋ですか?



怖くてそれからあまり彼には触れない様にしている。



……年齢のわりに良い体してるんだけどな…。

いやそれ、どうでもいいし。

あ……どうでもよくない。
180センチ越えの筋肉質はどうでもいいレベルではない。



だけど10歳も歳下の40歳。

私は50歳。
普通の主婦なら恋だの愛だの言ってないでしょ?

恋愛なんてもう、沙耶ちゃんの今までの人生の長さくらい、ご無沙汰している。



荒川さんだって、仕事が忙しくて不規則で、女性と知り合う機会があまり無いだけで、
今にきっと同年代の彼女が出来るんじゃないだろうか。



それに元夫の様に、心を見透かされながら一緒にいたら疲れてしまって、いつかは離れて行くのではないかと思うと、
誰かと恋愛するのが怖い。



それが荒川さんだったら、
今まで10年間で築き上げてきた信頼関係が崩れてしまう。

ボランティア以外でも精神的に支えてもらっている頼れる存在を失いたくないのだ。





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