正義の味方に愛された魔女1
考えてみると、昼間に捜査のお手伝いに来るのはひさしぶりだ。

警察署は、いつもより多くの人が往き来している。




荒川さんに挨拶して通り過ぎる人の中に、彼を呼び止める声がした。



「荒川さん!あ…一課長、すみません、ちょっといいですか?」

制服の20代後半くらいの婦警さん。



………なぜ私と荒川さんの間の、ほんの50センチ程度のスペースに立つ?



「ん?…っと…交通課の………」



「藤原です。もう!忘れちゃったんですかぁ?

昨日、独身会の御案内、持っていったじゃないですか!

一課に広めてもらえました?

私は荒川さんだけ出てくれたらいいんですけどね」



「独身会って、アレだろ?合コン……若いやつに伝えといたから、連絡行くだろ。
俺は浮くから遠慮しとくわ」



「えー、やっぱり、ほっといたら荒川さん絶対来てくれないですよね、来て下さいよ。
たまにはいいでしょ?」



「悪いけど……。
ごめんな、若いの何人か行くから」



「もー。一度は出てくださいね!

それか、いつでもいいので、今度ご飯食べに連れてって欲しいんですけど……」



「あー。そういうの、いいわ俺。

今からちょっと予定入ってるから、失礼する……じゃ」



「ちょっ……え~!なんかひどっ……」



荒川さんに引っ張られた時に、藤原さんに体が擦れてしまった…。

《何なの?このおばさん。何で荒川さんに引っ付いてるの?》



……引っ付いてるんじゃないでしょ…どう見ても引っ張られてるでしょ…連行でしょ。

このおばさんは、たぶん貴女にとって邪魔者だわ。

これだけイケメンならアラフォーでもアリだもんね。モテるでしょう……。

もう、なんか、ごめんなさいね。



それにしても荒川さん、
私に心で話し掛けるのがマイブームですか?



《変なのに捕まったな。
独身会なんて行かないから。

40過ぎて独身なのは俺が一途だからだ!

百合さん、少しは嫉妬してくれた?
ないよな、バレバレだもんなぁ》



おもむろに、こっち向いて

「な?」

とか……。



「一文字で会話終了とか、やめて」

《通じるだろ?
あ、つまんないか?
ずっと奥のほうまで全部視たら、つまらなくないよな?
声が聞こえないと寂しいか。そっか》



「じゃ、喋ろうか」



……この男のデレ方には問題があるね。

私の体質のせいだけど。





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