正義の味方に愛された魔女1
人間関係を築くとき、人はお互いに会話をし、相手の気持ちを知ることで、誤解を解いたり信頼しあったりする。



でも私達親子は、先に相手の気持ちがわかってしまう。

会話は相手の気持ちを自分が「補う」かたちになることが多い。

話し方によっては、後出しジャンケンで勝つ気分になることもあるだろう。



小学生の頃、隼人が「僕はズルいのか?」と聞いたとき
私は母の言葉を借りて話をした。


「お母さんは、隼人より力の使い方が下手だったし、
同じ様な人が周りにいなくて、
一人で悩んでずっと辛かったんだけど……、

おばあちゃんがね、この力は『神様からのプレゼント』だって言ってたんだ……。

使い方で毒にも薬にもなるんだって。



『自分にも人にも、薬になる様に、力を正しく優しく使って生きていって欲しい』って。



これはさ、おばあちゃんの遺言みたいなものだよね。



先に人の気持ちがわかってから、
自分に都合良く話すのと、
相手の気持ちに応えるの、
どっちを選ぶ?

決めるのは隼人だよ」



彼が自分の力のことで一番悩んでいたのは
小学校高学年から中学卒業くらいまでだったと思う。



高校三年間は力の応用期間だとでもいうように、心を自由にしていた。

人並みに?部活だの女の子だのと、楽しそうにやっていたけど、
隼人の心に恋愛は視えなかった。

……ちょっと期待して、心配して……損した。





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