ムサシひとり
(四の二)

「ムサシが来たぞー!」

どっとざわめく武士達。

「 オォーッ!」

歓声をあげる武士達。

小次郎は、その声を聞くや否や、弾かれたように立ち上がった。

そして、背にかけていた長剣を外すと、左手に持ち水際に走った。

太陽を背にしたムサシの姿は、頑強だった。

誰からともなく、声が飛んだ。

" 鬼神だー!"

小次郎は、舟から砂地に飛び降りたムサシに向かって、叫んだ。

「 待ちかねたゾ、ムサシ!」

長剣を右手に持ち、鞘を投げ捨て、小次郎は走り寄った。

" ヤブレタリーィ、コジロー!"

ムサシの声が浜辺一帯に響いた。
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