「恋模様は雨模様」
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『いらっしゃいませお好きな席どうぞ』レトロな店内とクラシックの音にコーヒーのいい香り。(はぁ、あったかいもののもう)店員の男の子が親切にタオルを貸してくれた。あったかいコーヒーとふわふわのタオルにほっとした。
あ、もうこんな時間だ、バス乗らなきゃ。
「おいしかったですあと、タオルすいません明日お持ちします」私の問いにオーナーさんらしき男性に「気にしないでお使いになってください、風邪ひかないようにね」カシャーン・・・《ありがとうございました》なんて優しい人たちなんだろうと思いながら壊れたパンプスでバス停に向かう。「あ、また雨」店内を出た瞬間に大雨が降り始めていた。
同時に運命の針も進み始めていることにこの時の私は気づきもしなかった。

雨の音がだんだん強まってきていた。今週は台風が3つも日本に直撃予報を出していたせいだ。雨に濡れた土のにおい、車のタイヤにはねる水音。
バス停前の小さな屋根のついたベンチ、ここは恋のスタート地点。
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