お願いだから、つかまえて
1. 見つけちゃった!
顔が、タイプだ。
第一印象はそれだけ。
でもそれって、すごくインパクトがあった。
つい目で追ってしまう。
眼鏡の影になっている長くて黒い睫毛に、薄い二重を描く目は、意外と大きくて。
でもいかにも切るのが面倒くさかった、という感じで伸びきった前髪でそれは隠れがちで。
あまり目を合わせてくれなかった。
私は見てしまうのに。
たぶんその場の誰も、彼をカッコイイとかイケメンとか思ってはいなかったと、思う。
ほとんど口を開かないし、自分を主張しない人だったし、なんとなく俯きがちで、存在感がなかった。
だけどよく見れば鼻筋がすっと通ってきれいな形をしているし、
残念なくらいかさついている唇も、笑みを作る時、左右対称であることが際立っていた。
あー、眉毛整えてあげたいな。
前髪でよくは見えないけれど、たぶん放置してる。
なんて、ぼんやり彼の顔を眺めていた。
まだ肌寒いけれど春が始まっているある日、満開の桜の木の下、
ごつごつした地面に敷いた、何枚ものビニールシートの上に広げられた紙コップや紙皿、
持ち寄った料理とお酒で出来上がった安いお祭り騒ぎの一角に、
ひっそりと胡座をかいている佐々木怜士(ささきれいじ)を、
私はうっかり、見つけてしまった。
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