お願いだから、つかまえて

で、それで? と先を促されて、私は順番を考えず結論だけ口から零してしまった。

「それで…昨日修吾に、プロポーズされた。」
「はあああああ?!」

気持ちがいいくらい、香苗のリアクションは私の衝撃をも再現してくれた。

「何がどーなって、そーなったわけ?!」
「わかんない…」

香苗は唖然として言葉を失っている。
私は補足説明で、会場を出た後から、ここ数日起きたことを話す。
さすがに、レイブまがいのことはぼかしたけれど。

「…仕事のことも、あるし。仕事のためにプロポーズ受けるとかそういうつもりはないけど、断ったら仕事どうしようとか…もー、どーしたらいいのか…」
「いや、うん…わかるよ、言いたいことは。でも整理しよう、まず。」
「うん…して。」

自分のことなのに丸投げしても、香苗は真剣に考えてくれる。

「だから、一番重要なのは、理紗の気持ちよ。」

眉を寄せて、香苗はそう言った。そして、

「佐々木くんが好きなのね?」

断定した。

「…うぅぅぅ〜ん…」
「矢田さんがいるから、佐々木くんのとこに行けないわけでしょ?」
「いや、でも、佐々木くんは私と付き合う気はないわけで…」
「そんなことないでしょ!」
「だって、彼氏いても別にって…」
「どういうつもりかちゃんと聞いたの?」
「ううん…」
「なんで聞かないの!」
「だって…」

どんな答えが返ってきたって、私は困る。
聞かなくたって困ってるけど。

「いや、いいのよ、この際、佐々木くんのことは。あんたのことよ。佐々木くんがどういうつもりであれ、理紗は佐々木くんが好き?」
「……うぅ…」

香苗は深々と溜息をついた。

「理紗がはっきりそう言えない理由は二つ。一つ、佐々木くんの気持ちがわからないから。二つ、矢田さんと別れるわけにいかないと思ってるから。どう?」

…ぐぅの音も出ない。

「…はい…」
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