お願いだから、つかまえて
朝になって、お祖母ちゃんが意識を取り戻すまで、佐々木くんはずっと傍にいてくれた。
あの通話の後、彼は車を飛ばして病院まで来てくれていて(お酒をまだ飲んでいなかったのは奇跡だった、と笑っていた)、
ひとまず手術は成功した、という知らせを一緒に聞いて、それから一度私を家まで送ってくれた。
私がお祖母ちゃんの着替えをボストンバッグに詰めている間、お粥を作って、ぐったりしている私に食べさせてくれた。
「お祖母さん、生命力強そうじゃないですか。心配いらないですよ。」
そんなふうに言って、また車で病院まで送ってくれた。
お祖母ちゃんは軽度の脳出血で、しばらく入院することになった。
詳しく検査をしたところ、幸い後遺症もなかったけれど、老人だし、充分血圧には注意するようにと、医師からは強く言われた。
お祖母ちゃんは目が覚めればケロッとしていて、佐々木くんを見て喜んでいた。
目を薄く開けて、顔を覗き込んでいる私を見て、ぼんやりと口元を緩めて。
それから私の隣で遠慮がちに立っている佐々木くんを見つけた。
「あらやだ、怜士くん、久しぶりじゃないの。」
「第一声がそれなわけ?!」
私は思わずそう叫んで、崩れ落ちるようにお祖母ちゃんに覆い被さって、それから何も言えず、また泣いた。
個室ではなかったので、わんわん声を上げることもできずしゃくりあげるようにして泣き続ける私をお祖母ちゃんはおかしそうに笑って。
「ごめんね、びっくりしたね、理紗。お茶を入れたら、なんだか突然眩暈がしてね…」
倒れ込んだその頭に運悪く机をぶつけてしまい、その時に脳出血を起こしたのだろうと、後で医者は言った。
怜士くん、この子の傍にいてくれたの、ありがとうねえ、とあまり呂律が回らないまま言って、そこまでで疲れてしまったのか、お祖母ちゃんはほどなくしてまた眠りについた。
そして佐々木くんは、今度は疲れと安心でぐったりして、足元がおぼつかない私を抱え込んで、再び家まで運んでくれた。