お願いだから、つかまえて
驚いて私が駆け寄ると、佐々木くんも気がついて、窓を開けた。
「いつからいたんですか?!」
腕時計を見ると、22時を過ぎたところだった。
「ついさっきです。…ちょっと、あの後大丈夫だったかなと、心配だったので。大丈夫なら、良かったです。じゃ…」
「ちょ、ちょっとちょっとちょっと待って!!」
じゃ、と言って車から降りもせず、本当にエンジンをかけはじめようとするので、慌てて窓から手を突っ込んで佐々木くんの腕を掴んだ。
「上がっていきませんか! 私お礼もまともに言ってないし、ちゃんと謝りたいし、話もしたいし…」
「…じゃあ…」
佐々木くんは頷いて、ドアを開けた。
居間に引き入れて、ソファに座ってもらう。
「夜ご飯は食べたんですか?」
とりあえず、紅茶を淹れた。
マグカップを受け取りながら、佐々木くんが軽く頷く。
「ああ、はい。一応。」
ということは病院からここに直行して待っていたというわけでもないのだ。
よかった。ほっとした。
私は向かいのソファに座り、姿勢を正した。
「あの。お祖母ちゃんが倒れてから、色々と…ありがとうございました。ちゃんとお礼言ってなかったと思うんですけど。本当に救われました。」
「いえ、そんなことは。お祖母さん、お元気そうでよかったですね。」
「はい、もう、本当に…」
佐々木くんは少しだけ微笑んで紅茶をすする。
「あと、病院で。修吾が…ごめんなさい。」
「いえ、それは…つい僕が煽ってしまって、こちらこそすみません。」
「ついって。…びっくりしました」
「…すみません」
「いえ、責めてるんじゃなくて。」