お願いだから、つかまえて

「…あ。ごめんなさい。」
「間違えていたのかもしれないと思いました。最初から好きだと言っていれば、そこまで苦しめなくて済んだかもしれないと。」

最初から好きだと言っていれば?
思考が展開に追いつかない。

「あの…」
「はい。」
「もしかして私今…告白されてます?」
「………」

え。黙るんだ。ち、違ったのかな…
と、思ったけれど。

「……そうですね。」
「………」

沈黙。
佐々木くんはきまり悪そうにマグカップを口に運んでいる。

そうなんだ。
私はようやく気が緩んで、ふ、と笑ってしまった。

「何それ…」
「え?」
「もう…何なんですか。私が今告白しようと思ったのに。」
「え?」

佐々木くんが目を丸くして顔を上げた。
出逢ってから一番、驚いている。

「なんでびっくりするんですか?」
「いや、もうその可能性はないかと…」
「ないと思っててそういうこと言うんですか? 今まで言ってくれなかったのに。ずるくないですか?」
「…すみません。」

謝ってるし。
捨てられた犬みたいになってて、可愛いくて。
ちょっと意地悪な気分になった。
だって散々、悩まされたし。

「ねえ。いつからですか?」
「いつからって。」
「いつから私のこと好きだったの?」

佐々木くんは嫌そうに顔をしかめた。

「…最初からですよ。お花見の時。綺麗な人だなと思って…居心地よかったし…」

なんだ。一緒だ。
すごい、変な回り道した。

「言ってくれれば良かったのに。」
「だから…そんなことしたら、断るでしょう。…もし、僕のことを好きでも。」

何それ、とまた思った。
だけど図星かもしれなかった。
ううん。どうだろう。
…もし、なんてことは、永遠にわからない。
< 122 / 194 >

この作品をシェア

pagetop