お願いだから、つかまえて
修吾なんか黙っていればモテるだろうし、女に困っていたとも思えないのに、私と出会う28歳まで浮いた話一つなかったみたいで、私なんかに猛アタックしちゃったりして。
世には不思議なこともあるものだ。
「なーんだよ。」
じっと顔を見つめていたら、照れて、長い指でデコピンされた。
「ううん。修吾、私なんかにそんなの、杞憂で、時間もったいないよ。」
「理紗は自覚なさすぎ! もっと危機感持てよ。言い寄られたらちゃんと断るんだぞ。」
「だからないって。修吾ってほんと、奇特な人だなあ。」
「全然わかってないんだもんなあ、お前…」
修吾はため息をついて。
私の頭を引き寄せると、キスをしてきた。
私も彼の肩に手をかけて、彼の逞しい腕の中にすっぽり入って応える。
「ん…」
すぐに舌が唇を押し入ってきて、遠慮なく私の舌を捉え、絡め取った。
頭を押さえていた手が首に下りてきて、指先が髪をまとめている私のうぶ毛をくすぐる。もう片方の手は、肩から背中を滑って腰をまさぐってきた。
真っ昼間のオフィスで、なんていやらしいキス。
「…あー、抱きたい。」
唇を離すと修吾が耳元で低く言った。
「や、やだよ、こんなとこで…」
「わかってるよ。仕事溜まってるし。あーこんな生殺し、地獄。」
ぼやきながら気持ちが収まらないのか、うなじにちゅっとキスしてくる。
「自分からしてきたくせに…」
「そーだけど。なんか麻薬みたいな女、お前って…」
「失礼な、ちょ…あっ、やめてって…」
ブラウスの襟元をぐっと引っ張られて、首すじを甜められた。
「もう…」
私は上がりそうになった息を押さえ、修吾の胸を両手で押して身体を離した。