お願いだから、つかまえて
前言撤回だ。
私の心は今、ぐらぐらになっている!
「そ、そ、そんな、そんな、簡単に…」
私は、2年以上もそれを待ってたっていうのに。
「け、結婚となると、色々、面倒なことあるじゃないですか。いいんですか、そんな感じで…」
「なんですか、それ。結婚なんか紙持って役所行けばできるじゃないですか。」
「……そ……」
それは、そうだけど。
「だからお祖母さんにはご挨拶に行きますよ。結婚の報告とかは退院後でもいいですけど。籍を入れるタイミングも、僕は今日でもいいですけど、お祖母さんのことが落ち着いてからのほうが良ければそれでもいいですし。」
言いながら、佐々木くんはさっさと居間に入っていってしまう。
待って、待ってと言いながら私も後を追いかける。
「ああ、経済的なことなら心配しないで下さい。理紗さんとお祖母さんを養うくらいの収入はあるので。式もちゃんと挙げたかったら費用のことは心配しなくていいですよ。あとはそうですね…家ですかね。お祖母さんと広めのマンションを借りるか、僕がここに越してくるっていう手も……家を建てるとなるとすぐにとはいかないしさすがにローンかなとは思いますが…」
「待って、待ってってば!」
「はい。」
私がヒステリックに叫ぶと、滔々と話していた佐々木くんはピタリと口を閉ざした。
といって、私に何か言いたいことがあるわけでもなく、ただ話が速すぎて、ついていけなかっただけなんだけど。
「えっと…ちょっと…混乱しているので…」
「ああ、僕、早まりましたか。まあおいおい考えてくれればいいですけど。」
お風呂をお借りしても?
と佐々木くんが言うので、私はバタバタとバスタオルを用意しに走って、結局その話はそこで打ち切りになった。