お願いだから、つかまえて

これ以上私の都合に付き合わせるのかと恐縮しまくりの私に、別に構いませんよと言って、佐々木くんは土曜の夜に時間を取ってくれた。

彼は残業することもほとんどなく、土日もきちんと休んでいる。いちいち比べるのもおかしいけれど、そんなところも修吾と真逆で、居間でだらけている彼を見る度に新鮮な思いがする。
そのかわりと言ってはなんだけど、家にいる時はほとんどの時間、パソコンに向かっている。
それが仕事なのか遊びなのか、画面を見ても私にはさっぱりわからない。
一度聞いてみたら、「仕事のような、そうじゃないような…」と言って困り果てたように返答に悩んでいたので、もう聞かないことにした。

というか、佐々木くんはもう一週間近く、うちに泊まり込んでいる。
で、ノートパソコンやら、なんだかわからない難しそうな本をうちの居間に持ち込んで、悠々と暮らしているわけだ。
時々服やら何やらを取りに自分の部屋に帰るけれど、すぐに戻ってくる。

「だって、放っておくと理紗さん、食べないですよね。」

とか言われて、どう考えても、声をかけなければ寝食を忘れてパソコンに没頭しそうなのはあなたのほう…と不本意だったけれど、

「自覚してますか? お祖母さんが倒れてから、理紗さん、痩せてますよ。」

と言われて。
ああ心配されていたんだ、とようやくわかった。

料理は、気が向いた方がして、毎日、朝ご飯と夜ご飯は一緒に食べている。
ほとんど同棲だ。

すごく、無理がなくて、ずっと一緒に暮らしていたかのような生活が、あまりにも心地良い。
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