お願いだから、つかまえて
…そんなこと、あったっけ。
確かに友理奈ちゃんは、人との距離を詰めるのが異様に速い割に、友達が多いという感じでもなかった。
それでも私には懐いてくれて、可愛くて、よく一緒にいるようになった。
「私嬉しかったんですよね。素でいるのもそろそろ限界なのかなと思ったんですけど、理紗さんが深ーい懐で受け止めてくれて、なんとなく周りともうまくコミュニケーション取りやすいようにフォロー入れてくれて。」
「そんなこと、したっけ…?」
「まあ理紗さんは、癖みたいなものですよ、それたぶん。」
何故か解説を入れてくれたのは、佐々木くんだ。
「癖…」
「その時とおんなじ感じします、佐々木さん。あるままを受け入れてくれる感じ。納得です。」
「はあ…」
「僕と初めて会った時もそうでしたよ。僕はあまり人とワイワイするの得意じゃないので、黙ってることが多いんですけど、理紗さんはこちらが喋りやすいように話しかけてくれて。」
…それは…たぶん…下心が………
とは、言えず…
友理奈ちゃんが目をキラキラさせて、わかりますー、目に浮かびますー、と言うのを複雑な気持ちで見てしまう。
「私達気が合いそうですね? 理紗ラヴァーズですね?」
「なんっっっだ、そりゃ!」
「いやでも、そんな佐々木さんがどうやってあの矢田さんから理紗さんを奪ったのか聞きたいです、やっぱ。」
「う、奪っ…」
「そういうことあんまり得意じゃないタイプですよね? 理紗さんと似た者だとすると…」