お願いだから、つかまえて
いや、あの、似ては…ないんじゃないかな…?
佐々木くんと居ると、もう何年も一緒だったような気がしてとてもしっくりくるのは確かだけど、びっくりすることも多い。
「まあ、もちろん人生で初めてですよ。そんなことしたのは。」
なかなか失礼なことを言われても、佐々木くんは普通に答えている。
え、こういうところ? 私もこんな感じなの?
「それだけ好きになっちゃったってことですね?!」
「そりゃそうでしょう。」
「大変だったでしょう、理紗さんを落とすのは?」
「はい、それはもう。」
「よっ、よく言いますよねそんなこと!」
さらっと、手出したくせに!
真っ赤になって怒鳴った私を横目で見て、佐々木くんはしらっと言う。
「必死だったって言ったじゃないですか、僕。」
「………」
「だってね、矢田さん…あ、矢田さんて私達の上司で理紗さんの元カレですけど。」
「はい、知ってます。」
「あの人の理紗さんの愛しぶりはすごかったですよ。まさか手放すとは思いませんでしたよ。」
「そうでしょうね。僕も手放す気無いですし、気持ちはわかりますよ。」
あ、甘いっ…
そして、恥ずかしい!
「あ、可愛い。理紗さん照れてる。矢田さんといる時はどんなに愛情表明されてもそんな顔しなかったのに。」
「え…そう?」
「そうですよー! いつも、ちょっと困って適度に流してましたよ。そりゃもう神業的なスキルの高さで。あれが見られなくなると思うとちょっと残念ですね。」
「………」
「あの矢田さんの扱い方が、理紗さんの美人度を上げてたんですけど、そうか、恋したらどんな美人も可愛くなるんですね。可愛くなれる人を探さなきゃですね。勉強になります。」