お願いだから、つかまえて

友理奈ちゃんがおしぼりを放り出して私に顔を寄せて、興奮してまくしたててくる。

「うっわ、びっくりしました、ズルイですよ、全然こっち見ないしあんな黒縁メガネで、全然顔わかんないじゃないですか! え、なんであのままにしとくんですか? コンタクトにさせて、服から何から選んであげればいいじゃないですか! 磨けば光りまくる逸材じゃないですか! ごめんなさい私、正直第一印象『えっ理紗さん、こんなもさい男が矢田さんよりいいんですか?!』だったんですけど、とんでもないですね、ごめんなさい、私修行が足りないです!!」
「わかった、わかった、わかったから…」
「…すみません、もさい男で…」
「うっぎゃーー!!」

いつの間にか佐々木くんが戻ってきて友理奈ちゃんの横に立って口を挟んだものだから、友理奈ちゃんが絶叫した。

「いつから居たんですかああ気配殺さないでくださいよ!!」
「よく言われます。」

佐々木くんは気に触った様子もなく、また私の隣に腰を下ろす。

「だからね、佐々木さん、もうちょっと身なりに気を遣うと、理紗さんと並んだ時美男美女カップルで、お似合いですよ!」
「………」
「彼、職業柄、コンタクトは辛いんじゃないかな。服にもあんまり興味ないもんね? 美容院も好きじゃないし…」
「面倒なんですよ…」
「勿体無い!! イケメンを隠して生きるなんて!!」
「イケメンでもないですし…」
「ほんとだ! 無自覚! あーっほんとに似た者同士!」
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