お願いだから、つかまえて
11. 話をしよう
「あっ…あの、なんか…あ……色々ちゃ、んと、話してないこと、あったみたいでっ…」
「え?」
佐々木くんは、手を止めてくれない。
背中から腰にかけて指先をゆっくり滑らせる。もう片方の手は、やわやわと後ろから乳房に触れて遊んでいる。
「あの…聞いて、る?」
「聞いてますよ。どうぞ、続けて。」
続けてって。
「あの…とりあえず、敬語、やめません?」
「…ああ…」
ずっと私の身体のどこかしらに触れていた手がようやく止まった。
「敬語使ってれば、警戒されないんじゃないかと思ったんですよね。逆に距離を詰めやすいかなと…」
「もう、必要ない、でしょ。」
私が肩越しに振り返り、のしかかっている佐々木くんを見上げると。
彼は、眼鏡の奥の目を柔らかく細めて、微笑んだ。
「…そうだね。」
う、わっ…
どくん、と心臓が大きく鳴った。
もう。やだ。
磨けば光る逸材、なんて、とんでもなくて。
このままでも、私は、こんなにもドキドキする。
ていうか、毎日生まれ持った素材をいかんなく発揮されてしまったら、心臓保たないかも。
なんて、思っていたら背中にいた手のひらが片頬を包んで、引き寄せられて、深いキスをされた。
「…ん、ふ…んん…」
唇であたたかく唇を包まれたと思ったら、舌をゆっくりと絡められて、余すところなく味わいつくされる。
「あ、あと、あの…あんっ、」
唇がようやく離れた隙を見て、言葉を継ごうとしたら、胸のてっぺんを指先で押込むようにして遮られた。
「まだあるんですか? 集中したいんですけど。」
「…敬語。」
「………」
佐々木くんは不服そうに黙り込む。