お願いだから、つかまえて

だって、ようやく友理奈ちゃんに開放されて、色々話そうと思っていたのに、家のドアを開ける前から待ちかねたようにキスをされて。

佐々木くんの求め方は乱暴なんかじゃなく、いつだってスローな手つきで、優しいけれど。
玄関で靴も脱がず、延々唇を重ねて、身体中まさぐられて。
私は結局、頭が痺れて、身体が疼いて、追い詰められてしまった。

せめて部屋にと懇願して、やっとベッドに辿り着いたと思ったら、服を脱がされて、うつ伏せに身体を固定されて、いいように触られている。

「あの、正社員のこと、…んっ…別に隠してたわけじゃなくて…」
「いいですよ。」
「…敬語…」
「………」
「あっ、もう、やっ…」

なんでこんなに。
私、感じやすかったっけ?
耳の後ろをべろりと甜められ、胸を責められて、また声を上げてしまう。

「理紗さんの、仕事のことは、」
「あっ、んんっ…ぁ…」

佐々木くんは手を緩めずに話す。ずるい。

「どうしても、あの、矢田さん? が絡んでくるから、話しづらいのは、わかるし。」
「ていうか、あの、あ、ぁ…お祖母ちゃんのこととか、あって…は、ん…私に負担、かけないように、して、くれてたんだよね…?」

何も聞かないで、何も話させず、ただ一緒にいてくれた。

「まあ…ただの、嫉妬もあるし…あと僕も仕事のことをちゃんと話そうとする説明が難しいし…」

あ、そう、なんだ。

「…僕は、いいんですよ。理紗さんなら、なんでも…」
「あ、あぁっ…」

< 142 / 194 >

この作品をシェア

pagetop