お願いだから、つかまえて

三人でお見舞いに行ったら、お祖母ちゃんの喜びようは、それはもうすごかった。
あまりのテンションの高さに、こちらが不安になるくらいで、まさかこの上結婚の話なんて切り出したら大変なことになる、と示し合わせたわけではないけれど、私も怜士くんも口をつぐんだまま、当たり障りのない話をして、ひとまず去ることにした。

それから、山園さんも合流して、夜ご飯を4人で食べることになった。

「ああ、へえー! 仲良さそうだったもんなあ、理紗ちゃんと佐々木くん。おめでとう!」

付き合うことになったと報告しても、山園さんは相変わらずニコニコと、大して驚くでもなく、そんなふうに言ってくれた。

山園さんがそんな感じだから、やっと私と怜士くんは、質問攻めにされることもなく、何に慌てることもなく、和やかに楽しく食事をできる。

と思ってたのだけれど。

「そうだ佐々木くん、例の話、どう? 進んでる?」
「ああ、まだ完全ではないですけど…でも一回お見せして、打ち合わせしたほうがいいかもしれないですね。」

なんて会話が、山園さんと怜士くんの間で始まった。

「デザイン的にはやっぱり女性の意見を聞いたほうがいいと思うので、ちょっと悩むところがありますけど。使いやすさ的にも、どこまでを基準にしたらいいのか…」

何の話?
と香苗に目を向けると、小さく首を振るだけで、どうやらわからないらしい。

「ん? ああ、ごめんね。佐々木くん、理紗ちゃんに仕事の話はあんまりしないの? 僕のとこの話はいいけど、ゆくゆくは説明が要るんじゃないの?」
「しようとは思ってるんですけど。説明、苦手で…」
「佐々木くん、プレゼンはノータッチらしいもんなあ。」
「そうなんですよね…」
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