お願いだから、つかまえて

「この際だから説明しちゃえば?」

山園さんに促されて、怜士くんが言葉を探して沈黙する。

え、何?

訝しがる私と香苗に、別に悪い話じゃないよ、と山園さんが笑う。

「つまり…僕が今の会社でいる部署は、基本的にはソフトウェア関連のところなんですけど、結構、会社が大手の割に、末端は緩くて…」
「というか、佐々木くんがなんでもできちゃうから、便利屋みたいになっちゃってるらしいんだよ、どうやら。」
「仕事量が増える分には、僕は構わないんですけど、こう…クライアントから僕のところに仕事が下りてくるまでに、色々、部署挟んじゃってるから、要望が不明瞭に感じることが多くて、結構煩わしいことがあって…無駄な時間がかなりあって。」

はあ、なるほど。
どおりで、暇さえあればパソコンに向かっているわけだ。

「すごく、面倒くさくて、最近はフリーで副業的に、仕事を請け負うことが増えてきて。」
「評判いいんだよ、とても。」
「やっぱりダイレクトに話が伝わるんで、やりやすいんですよ。」
「で、それなら、僕の実家がね、呉服屋なんだけど、ちょうど旅館をひとつ買ったところで。うまいこと、提携する方法を模索してたところだから、色々助けてもらおうと、お願いしてね。」
「つまり、着物とか生地とかの商品のデータベースだとか、旅館の予約システムだとか、そういう一連のものを一括で管理できて、客に利用してもらいやすくするって話で。」
「ウチ、代々続くとか言われてるけど、要するに古いんだ。これを期に現代に通用する商売にシフトしていこうと。まあ簡単に言うと、事業改革に乗り出そうとしてるわけ。」
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