お願いだから、つかまえて
12. 愛してるって言って
「カンパーイ!!」

賑やかにジョッキがぶつかる音があちこちで弾けた。

「いやー、もー、ほんとに良かったですー! これで理紗さんとずっと仕事できますー!」

友理奈ちゃんがハイテンションで叫んでいる。

ありがたい事に、この飲み会は私の正社員昇格のお祝い、もとい歓迎会として開かれている。
任される仕事が少し増えて、今いる第一営業だけでなく、第二、第三にも時々補佐で入ることになり、そちらからも有志で人が集まってくれて、なかなか大所帯な宴になっている。

これからもよろしくお願いします、とか、これからお世話になります、とか、いろんな人と頭を下げあっていたのは最初だけで。
元々和気あいあいとした職場だから、だんだん無礼講みたいな雰囲気になってきて、私も自分が主役だなんてことは忘れ去って好きに飲みまくっていた。

「宮前さん、宮前さん」

目の前の席が空いたと思ったら、そこに滑り込んでしきりに私を呼びながら身を乗り出してきたのは。

「えっと。高梨くん!」

今年入ってきたばっかりの、アイドルみたいな顔をして、結構キャーキャー騒がれていた男の子だった。

「うおーよかった、覚えてもらえてて。」

彼は隣の第二にいるから、普段はあまり接点がないけれど、少し前に営業を手伝ったことがあったのだ。

「覚えてるよー、今日は来てくれてありがとね。」
「とんでもないっす! デビュー戦を宮前さんにサポートしてもらって、ほんと有り難かったです。またよろしくお願いします。」
「こちらこそ。」
「理紗さんって呼んでもいいですか?」
「うん? どうぞ?」

ん? なんか、風向きが…
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