お願いだから、つかまえて

「えー、でもそしたら俺にチャンスあるってことっすか?」
「ないわよバーカ!」

友理奈ちゃんが高梨くんの後頭部をはたいて、その隣に座った。

「なんでですか! そら、矢田さんに比べたら俺なんかまだまだですけど、若さと将来という素晴らしい武器が俺には…って、え?! もしや、彼氏がもういるんすか?!」
「何突っ込んで聞いてんのこの新米がっ! 理紗さんのプライバシーに踏み込もうなんて100年早いのよっ!」
「馬鹿野郎、お前なんかにチャンスがあるなら、俺に無いわけないだろ。無いんだよ。諦めろ。」

友理奈ちゃんに続いて、修吾までもがそんなふうに言った。

「てことは、いるんじゃないすかー! まじかよー! 即失恋かよー! 凹むわ…」
「お前の凹みなんか俺に比べたら生っちょろいな。」

しゅ、修吾…
なんか、ぶっちゃけたな…

地味に、友理奈ちゃんの奥には長戸さんが一言も洩らさずやり取りを聞こうとしていて、おまけに憎々しげな視線を私に向けてくる。

「えー、なんか矢田さん、理紗さんに振られて、一皮剥けたんじゃないですか? 私結構今の矢田さん、好きかもです。次は私とかどうですか?」
「えぇっ?」

友理奈ちゃん?!

「え、ダメですか? 理紗さん、元彼にはずっと自分を好きでいてもらいたいタイプですか?」
「じゃなくて、あの…」

お隣の、長戸さんが怖くないんですか?
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