お願いだから、つかまえて
後日談
友理奈ちゃんと長戸さん
天敵、長戸が何やら妙に理紗さんとの距離を縮めている。
矢田さんを落とすには理紗さんを味方につけろってことか?
理紗さんは博愛精神なところがあるから、来る者拒まずで、長戸のことも今やなんだかんだ可愛がっているみたい。
「長戸ー、これ書類、間違ってるけどココー」
面白くなくて、私はわざわざ大声で言ってやる。
「デリカシーのない前田さん、ご指摘どうもありがとうございます。」
「うっわー嫌な女ぁ。矢田さん今の聞きましたー?」
「うるさい、仕事しろ。」
矢田さんは理紗さんと別れてからますます絡みやすいキャラになってきているけど、やっぱり仕事には厳しい。
「長戸も、ミスが多いな。新米気分はそろそろお終いにしろ。」
「はい…すみません。」
途端にしおらしくなる長戸。
なんかハムスターとか、ウサギとか、そんな感じの動物を連想させる憎たらしい男受けのいい顔をしてるから、マドンナ的なポジションじゃないにしろ、なんやかんやとちやほやされて、苦労らしい苦労なんかしてこなかったんだろう。
矢田さんのことも軽く落とせると踏んでいたに違いない。
「友理奈ちゃんの長戸潰しはもう目的が全然わかんなくなってるけど、まだ続けるの?」
隣のデスクから理紗さんが苦笑して声をかけてくる。
「なんかあの女はカンに触るんで、続行予定です。」
「うーん…長戸さんも生き生きして見えるしいいのかな。」
理紗さんはよくわかんないことを言ってパソコンに向き直る。
私が大好きなこの人は、最近ますます綺麗だ。幸せオーラ全開、て感じ。
肌なんか本当に、内側から発光してます、て勢いだ。
前から羨ましい素材の持ち主ではあったけど、かなりあっさりとした性格が災いしてか、どちらかというと華やかな雰囲気ではなかった。
それが今や、社内で一緒に歩くと、ほとんどの人が振り返る。