お願いだから、つかまえて
香苗と拓哉くん
「うん、…オッケー了解。私の時散々働かせたし、任せてよ! え? …ああ、だからそんなのいいって。結果オーライよ! うん、わかったまた詳細決まったら連絡してね。はーい!」
上機嫌で電話を切ると、拓哉くんに肩を引き寄せられた。
「理紗ちゃん?」
「うん! 結婚式はしないで、パーティーにするから、手伝ってって。」
「そっか、式しないのか。」
日曜日の昼下がり、私達は久しぶりにのんびりと二人で過ごしている。
拓哉くんは会社に実家にと、毎日忙しくしているし、私も私で結婚しても、出版社での仕事は続けているから、家に二人で一日揃う日は貴重だ。
「まー、理紗もあんまり派手なことするタイプじゃないし、何より佐々木くんにとっては結婚式なんて苦行じゃない?」
「確かに…」
拓哉くんが肩を震わせてウケてる。
拓哉くんは佐々木くんと何気に仲良くなってるみたいだから、私よりも彼のことがよくわかるんだろう。
「理紗ちゃん、マリッジブルーとかないの?」
「ないでしょーあの子は…今までだって結婚してるようなものだったし。」
「なるほど。」
「えっ、まさか、佐々木くんはマリッジブルーなの?」
対して私は、実は佐々木くんのことはまだよく知らないから、そんなことを口走ってしまった。
「いや? 婚約指輪を買う前は胃薬飲んでたけど。」
「はぁ?」
「あとこないだは、佐々木理紗になると、名前に"さ"が多すぎるんじゃないかって、眉間に皺寄せてたな。」
「はあぁ?」