お願いだから、つかまえて
「まさか、拓哉くんから告白してくれるとは思わなかったなあ。」
「いや、そこは、男が決めないと。」
「意外と男気あるよね、拓哉くんって。」
「意外って…そりゃあ、香苗がお膳立てしてくれた感は否めないけど、僕にもプライドあるんだよ。」
結論から言えば、拓哉くんは前に付き合っていた人と婚約が破談になって、恋愛には極端に慎重になっていたのだった。
というか、慎重になっていたのは、結婚に対してだけど。
いい年した男女が出逢って恋をすれば、必ず結婚の話になるから。
「僕と結婚しても、香苗は幸せになれるかわからない、って悩んだけどさ…」
「残念でした、幸せですー」
「うん。あの時思い切って、本当に良かった。」
合コンの時、お花見の時、佐々木くんのおうちで集まった時。
その全部に居た、拓哉くんの同僚のうちの一人が、私に本気でアプローチする、と宣言していたのだと言う。
悩んでいる間にその人に取られてしまうと慌たのだ、拓哉くんは後から教えてくれた。
それもこれも、私がいつも綺麗にして、男の人の好意を集めていたから。
うん、私は、間違ってなかった。
告白も、誠実な拓哉くんらしかった。
佐々木くんの家からの、帰り道。
少しお茶していきませんか、と緊張した様子で
誘ってくれて。