お願いだから、つかまえて
怜士くん
「理紗…寝てるの?」
僕がお茶を淹れてソファに戻ると、理紗は座ったまま目を閉じて寝息をたてていた。
「寝るならちゃんと、ベッドに行かないと風邪ひくよ。」
隣に腰を下ろし、軽く頬に触れて促す。
「ん…」
珍しい。よっぽど疲れたのだろう。
今日は、僕の家族に挨拶をしに行ってきたから。
僕なんて放任されて育ったから、挨拶なんて形式だけのものなのに、理紗は珍しく緊張している様子だった。
理紗が人に気に入られないことのほうが僕には想像できない。何をそんなに心配していたのか知らないが、勿論それは杞憂に終わった。
「れーじくん…」
どうしたものかと無邪気な寝顔を眺めていたら、むにゃむにゃと唇が動いて僕を呼んだ。
「うん? お茶飲む?」
「うん…」
うん、と言って、またすーすーと寝息をたて始める。これは、起きられないかな。ベッドに運んだほうが良さそうだ。
身体を抱え上げる為に立ち上がろうとしたら、理紗は離れるのを嫌がって寝ぼけたまま僕に抱きついた。
「寝ないもん…」
「寝てていいよ。ベッドに連れてくだけだから。」
「ここにいるもん…」
「………」
いつもは理性的なのだが、時々こうして妙に頑固なところを発揮して、それでいて甘えてくる。
なんて可愛いんだろう。
僕は困り果てる。もうお手上げだ。
しなだれかかってくる彼女の肩を抱きとめながら、ため息をついてしまう。
「理紗…」
呟くと、また何やら反応してむにゃむにゃ言っているが、起きようとする気配はない。
身体がぴったりと密着して、とても満たされる反面、このままだと手を出したくなるに違いないと悩む。
さすがに今求めるのは可哀想だ。それはできない。
と思いながらも、僕の指は耐えきれず、白い腕をなぞり出す。