お願いだから、つかまえて
どうしても触れたい。
僕はその身体を抱きすくめる。
華奢なのに、どこに触れても柔らかい。
肌は白く、吸いついてくるようになめらかだ。
その身体の隅々まで、たわやかな曲線を指や唇で辿るのは、至福だ。
何度も唇を啄み、食み、舐めて、その柔らかさを堪能する。
呼応するようにふんわりと開いた唇に舌を滑り込ませ、及び腰の舌を捉えるうちに、僕はいつの間にか理紗の身体をまさぐっていた。
「あ…」
敏感な理紗がとろけた声を漏らす。
はっとした。
トリップしたような気分だ。僕はもはや中毒者だ。まずい。
「ごめん。疲れてるのに。」
身体を離して慌てて謝った。
なんだっけ。
「顔洗うんだっけ。違う。指輪か。」
「怜士…」
理紗があっけに取られたように呟く。
最近、時々僕を呼び捨てで呼ぶことがあるのも、嬉しいことのひとつだ。
矢田さんのことは、修吾、と呼んでいたのを知っているから、どこかで嫉妬していた。
誰もが口を揃えて彼女を愛していた、という彼と別れて僕の腕に飛び込んできてくれたのに、そんな小さなことで嫉妬するなんて、馬鹿馬鹿しいとわかってはいるけれど。
「あのね。」
理紗がキスの余韻で潤んだ目で僕を見る。
やめてくれ。そんな顔は、僕の欲情を掻き立てるだけだ。
僕はまた慌てて目を逸らす。
「なんで目逸らすの?」
すかさず責められた。
「いや…」
「逸らさないで。」
僕の身体の芯には火がつきかかっている。
本当にまずいから、やめてほしい。