お願いだから、つかまえて

「あ、や、だ…」

切れ切れにそうは言ったものの、もうどこにも力が入らなくて、されるがままだった。
キスも、やたら気持ちいいし。
顔は、好きだし…
もうなんか、どーでもいいかあ、みたいな気分になって。

見事に流された。

迫ってきたわりに、佐々木くんは淡々とした顔をしているし。

一体、なんだっていうの…

服をはだけさせられ、わけがわからないまま、その指から手のひらから肌に与えられ、絶え間なく続く愛撫に、散々啼かされた。

「理紗さん…」

佐々木くんが私に跨りながら呟くように言って、私はその声にもびくっと震えた。
佐々木くんは邪魔そうに眼鏡を取って放り出して、長い前髪を掻き上げた。
やっぱり、好きだ、この顔…と、露になった素顔に朦朧とした意識の中でそんなことを思って、それから。

…あ、この人、欲情、してる…

裸眼で一瞬射抜くように見られた時、それがわかってしまって。
私は、恍惚とした。

だめだ、もう…

ずぷ、と、彼が入ってきた、瞬間。

「…あっ!」

…嘘、何、これ?

「あっ、あぁ…佐々木くっ…」

やばい、おかしい。
こんな感覚、知らない。

「あっ待っ…て、…どうしようっ…」

そこから、溶けていくみたいだった。
溶け出して、一つになる…

奥から湧き出る快感が、もう止まることを知らなくて、身体中に広がっていく。
待ってと言いながら、自分の腰がいやらしく動いているのがわかる。

こんなの…こんなの、知らない。

「…う、あっ…」

佐々木くんが、呻いて。私の動きに合わせて、腰をすり合わせてくる。

こんな、誰に教えられたわけでもないのに、お互い、どうしたら良いのか、完璧にわかっていて。

やばい、これ、引き返せなくなる…

もう、何も考えられずに、
私はただただ、声をあげて、佐々木くんにしがみついて、意識が真っ白になるのをどうすることもできずに、溺れた。




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