お願いだから、つかまえて

その間、少しの猶予ができて私はほっとした。
元々そういうことに関しては淡白なほうだし。
修吾のいいようにと思ってきたから、
いつも、どんな瞬間に自分自身がそんな気分になるのか、考えたことがなかった。
いつもの自分を演じようなんて、無理な話なのかもしれない。

だけどこのままってわけにもいかない。
ベッドにそっと横たえられて、修吾がもどかしそうに着ているTシャツを脱いで、私に覆いかぶさってきて。

私はぎゅっと目を瞑った。
もう、仕方ない。あれを思い出すんだ。
佐々木くんに触れられた時のあの興奮、どうしようもない官能の波、あの愛撫…

「…あっ!」

最低だ。ごめん、修吾。

「あ、やっ…はぁっ…」
「理紗、可愛い…」

ジーンズを脱がされて、素足を撫でられ、ゆっくりと辿られて。
そこに触れられた時は、今度はちゃんと濡れていた。

「あぁんっ…」
「理紗…」
「しゅ、…ぅごっ…」

お願いだから。
私を夢中にして。
何も考えられなくして。

「修吾ぉっ…」

理紗、理紗と私を呼ぶ修吾の声を聞きながら、
私は必死に集中しようとして。
時々、佐々木くんの感触が蘇って、頭が痺れて。

もう、どの反応を選ぶのが正解なのかわからなくて。

ごめん、と思いながら、佐々木くんの名前だけは呼ばないように、頭の隅で、それだけ考えていた。


「ーーごめん、ガッついて」

果てた後、修吾が苦笑して言った。
修吾に対する申し訳なさと、なんとかできたことへの安堵で、私はぼうっとしていた。

「…ううん。」

私が浮かべた微笑みに、修吾はほっとした表情になった。
何か、やっぱり、態度おかしかったのかな。
自分じゃ、わからない…
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