お願いだから、つかまえて

怒涛の勢いで捲し立てているはずだけど、香苗の声は、多少酔いが回ってハッピーな感じ、の域を出ない。
酔ってるはずないけど。この子、ザルだけど。

「どうも。宮前です。こちら、佐々木さん。佐々木さん、こちらがさっき話した友達の香苗です。」
「ああ、どうも。佐々木です。」

さらっと挨拶をしてくれるあたり、人嫌いってわけでもないらしい。
と思っていたら、山園さんが屈託のない笑顔を佐々木くんに向けて言った。

「さっき部長が言ってたけど、今日の料理、半分くらいは佐々木くんが作ってくれたんだって? 大変だったろ、十数人分も。ありがとなー。」
「いえ、料理は趣味なので、別に…」

いや、さらっと答えてるけど、あなた。
さっき、全然知り合いじゃないって、言ってたよね?

「同僚なんじゃないですか!」
「…そう、なんですねえ…」

遠い目をするな、遠い目を!!


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