お願いだから、つかまえて
6. 決めるの


あれから佐々木くんからの連絡は相変わらず無く、
時間が経ち、本当に何もなかったんじゃないかと思えるくらいには、自然に振る舞うことに慣れてきて、意外とできるもんだなとか、私は呑気に思っていた。

「最近さ…乗り気じゃない?」

だからびっくりした。
修吾がそんなふうに思っていたなんて。

「ええっ?」

ゴールデンウィーク。
結局私が何もリクエストしなかったので、私は修吾の通い妻みたいになっていた。
予想通り、修吾はこの機会に後回しにして溜まっていた仕事や、この先にある営業の下準備など、やることはたくさんあって、時々、数時間会社に出勤までする有り様で。

私はその手伝いをしたり、ご飯を作ったり、求められれば抱かれて。

これはこれで蜜月みたいだな、なんて修吾は案外満足そうだったので、まあいいかと思っていたところで。
私はベッドに両肘をつき、仰向けに寝ている修吾の顔をのぞき込んだ。

「そんなこと…なんで?」
「いや、なんか…なんとなく。距離を感じて…」
「…こんなふうにしてても?」

手を伸ばして、修吾の頬を手のひらで撫でる。

慣れたというのは。
ちょっと、自分から触ったり、甘えた声を出したり。
こういうふうに、修吾が喜びそうなことを、丸め込むためにするとか。

そんなことでも、ある。

「いや、うん…」

案の定、気持ち良さそうに少し目は閉じたものの、修吾が納得する気配がないので。

どうする。浮気を告白する?

ここまで誤魔化してきたのに、今更?

それより、この際、今まで燻っていた疑問をぶつけてみようか…

ふと思いついて私は口を開いた。
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