お願いだから、つかまえて
「俺、本当に理紗と結婚しようと思ってる。理紗以外はあり得ない。理紗は、仕事ではサポートしてくれて、プライベートでは癒やしてくれて、本当に俺のことをよくわかってくれてるし、だから甘えてるのはわかってる。」
「…うん。」
「前も言ったと思うけど、本当に愛してるから、結婚する時は全部きちんとしたいんだ。本当に理紗を幸せにしたいから。」
「うん。」
「ただ、俺のさ、なんていうのかな…脳内を占めてることが、今は仕事でいっぱいで。俺、器用じゃないから、その片手間に結婚の準備をぱぱっとするとか、できないから。仕事が一段落して、脳内を結婚についてで埋められる状態の時に、やりたいんだ。」
「うん。」
うん、とは言ったものの。
反論したいことはいくつもあった。
働いている限り、修吾にそんな状態は訪れることなんて、あるの? とか。
じゃあ今は何なの? とか。
このゴールデンウィーク、時間はまあまああったんじゃないの? だけど脳内は仕事でいっぱいなの?
そもそも、私が結婚に向けてどうしたいのか、聞く気はないの?
…だけど、たぶんそういうのは、修吾のプライドを傷つけるだろう。
修吾が言っていることも、理解はできる。
「うん、わかったよ。」
修吾が求めている答えを口にしたら。
さっきよりはっきり、香苗の声が聞こえた。
"言えるでしょ理紗は。ほんとにそう思ってるなら。
別に今はいいやと思ってるから、わざわざ急かすようなことは言わないで、ずるずるここまで来てるんじゃないの?"
…そうなのかな。
わからない。
ただ、修吾が私の為にと色々考えてくれているんだろうけど、私にはその結論は、修吾の為に思える。
だけど、私の為にこうして!!
と言えるようなビジョンも、私には無いんだ。