お願いだから、つかまえて
と、いうようなことを。
かなり年下の友理奈ちゃんに言っても仕方ないのだけれど。
「え、それ、そもそも、理紗さん、矢田さんのこと好きですか?」
「………」
なんで、そんな。
皆して、同じようなこと、言うんだろう。
「好き、だよ。」
「めっちゃ自信ないじゃないですか。」
弱々しい声に速攻で突っ込まれた。
たまには飲みに行きませんかと誘われて、友理奈ちゃんと会社の近くの飲み屋に来た。
長戸のことはどうなってるんですかと攻められて、ちょっと長戸は今はどうでもいいかな、と言ったら何なんですか一体、という流れで、そんなことを、話すことに。
「ん〜理紗さんは、結構色んなことにこだわりないじゃないですか?」
「え、そう?」
「そーですよ。仕事も、それぞれの営業の人に合わせて、柔軟に対応するし。」
「それは、仕事なのでね…」
「でもそういうのできない人いっぱいいますよ。プライベートも同じですよ。」
「と、言いますと…」
だからー、と友理奈ちゃんは焼き鳥をビールで流し込んで言う。
「矢田さんの求めることが結構簡単にわかって、その通りに対応していくことに、抵抗がないでしょう。」
「…まあ、そうですね。」
「矢田さんは勘違いしてるかもしれないけど、それって別に理紗さんにとっては愛ゆえにってわけじゃないんですよきっと。たぶん好きでも好きじゃなくてもできるんですよ。できるからやっちゃうんですよ。」
「…ああー…」
なるほど。一理ある。
「で、矢田さんはそれに骨抜きになる。そして甘える。28歳の彼女に結婚は無期限で待てとか言っちゃう。」
「む、無期限…」
「そうでしょ。」
「はい…」