お願いだから、つかまえて

長戸でもあてがっときゃいいんですよ、と友理奈ちゃんは言ったけれど。
やっぱり、修吾は浮気なんかしない。
修吾に悪いところなんか、何もないんだ。

「お、なんだどうした?」

ぎゅう、と修吾に抱きついたら、修吾が物珍しそうに言った。

ほんと、不誠実なのは私ばっかりで。
ごめん、とまた心の中で謝って、ぎゅうぎゅう、修吾の背中に回した腕を締め付ける。

「…何? 妬いたの?」

修吾の声が嬉しそうに弾んで、抱きしめ返してくれた。

「…違います。」
「じゃあなんだよー」

本当にこの人のこと大事にしなくちゃ。
大事にしよう。

明日は、長戸さんのフォローをするんだ。
小動物みたいな顔に似合わない、こちらがちょっと怯むくらいきつい眼つきで睨まれても、困ったように笑いかけて。
おはようって言うんだ。

修吾が恐ろしいほど長戸さんに冷たくあたったら、
後ろからふんわり言葉を被せて。
周りから何か言われたら、何もないですよとびっくりしてみせて。

長戸さんになんであなたなんですかって叫ばれたら、
わからないけど、私も彼が好きだからって。

そうやって、ちゃんと修吾の彼女をやるんだ。

そんなに難しい事じゃない。

私は修吾の腕の中で、深呼吸して、そう決めた。

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