お願いだから、つかまえて

「何? どうせ用事なんかないでしょ? あ、矢田さんと約束? だったら連れて行っちゃえば?」

連れて行けるわけないだろ! 佐々木くんいるのに!

とはもちろん言えず。

「いやー、でもなんか二日酔いが…」
「気合いよ! 行くわよ!」

香苗はそれで会話を打ち切り、お祖母ちゃーん、と言いながら部屋を出ていった。

まじかー…

まさか佐々木くんから屋外で迫られるなんてことはないと思うけれど。
私、平常心でいられるかなあ…

私はため息をつき、香苗のためにバスタオルを用意して居間に降りた。

お祖母ちゃんは、久しぶりに会う香苗とそれはそれは嬉しそうに話していた。

「香苗ちゃんすっかり綺麗になっちゃってねえ…」

どうせこの台詞も一回目じゃないんだろう。

「お祖母ちゃん私結婚するんだよー!」
「まあまあまあまあ! そりゃあおめでとうねえ!」

香苗が自分のお祖母ちゃんに報告するかのように言えば、お祖母ちゃんも自分の孫のことを喜ぶかのようにはしゃぐ。

「理紗も早く結婚しないかしらねえ。ひ孫の顔が見たいんだけど…」
「理紗はねえまだちょっと先かな〜。お祖母ちゃん長生きしないとね!」
「私はねえ、怜士くんがいいと」
「香苗っ、服!! どれ着るの?!」

危なっ!
お祖母ちゃん、何を言い出すやら。

「あ、なんか汚れてもいいのあるー? でも理紗のパンツ細いからなあ」

香苗が振り返り、不審そうな様子も見せずまた私の部屋に向かう。
私は頭を抱えたい思いでその後を追った。
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