お願いだから、つかまえて
「…塩かな。」
「僕もかなり塩に傾いているんですけど、ソースの辛子マヨたっぷりっていうのも捨てがたくて。」
「あー、はい。私あれ好きです、細くなってバーってこう派手に…なんで塊になってるのと味が違く感じるんですかね?」
「四割増くらいで美味しいですよね。だからその細くなるのに詰めては来たんですよ辛子マヨ。」
「え、じゃあやっぱりソースかなあ。勿体無いし。」
「それは大丈夫ですよ使わなかったら明日お好み焼きにするので。」
何話してるんだろう、こんなに淀みなく、二人で。
なーんにも考えないで、言葉がほろほろ、勝手に零れてくる感じだった。
「あれ、ビール飲んでないんですか?」
見れば佐々木くんが鉄板の脇に確保しているのはビールではなく、スポーツドリンクだ。
「今日は車なので。」
「あー、荷物がね。ありがとうございます。」
「いえいえ、僕は食料担当で、山園さんの物もだいぶありますよ。この鉄板もそのテントもそうですし、椅子とか。」
「もしかして山園さんと結構仲良くなったんですか?」
「さあ…あの方、人当たりいいですからねえ。」
佐々木くんはどうでも良さそうに答える。
眼鏡が汗で滑り落ちてきて不自由そうだ。
お祭り騒ぎの中から山園さんが、佐々木くーん、と呼びながら抜け出てきた。
「ごめん、今クライアントから呼び出しかかっちゃって。僕の物、一旦佐々木くんちに引き取ってもらっててもいいかな?」
「ああ、どうぞ。」
香苗も山園さんを追ってやって来る。
「あ、香苗、その靴車に置いといてあげようか? 残るだろ?」
「あっ、ありがとう、終わったら連絡して。気をつけてね。」
「うん。じゃあ本当ごめんな佐々木くん、皆さんゆっくり楽しんで!」
バタバタと慌ただしく山園さんがは去っていった。