お願いだから、つかまえて
…存在感がない、なんてことはなくて。
こうしてきちんとしていれば、やっぱり、相当格好良かった。
なんのセットをしていない髪も、元々頭の形がきれいなのか、少し外したラフなスタイルに見えなくもないし、前髪の影になりがちな目元はミステリアスで、眼鏡は知性を感じさせる。
たぶん着苦しいからだけど、ボタンを上から三個開けているのも、首筋と鎖骨をちらちら見せつけているようで、なんだか悩ましい。
実は筋肉がちゃんとついている身体のラインも、脚が長いのも、今日ははっきりわかりやすく見て取れた。
こういうの、なんていうんだっけ。
えーと、そう。
"眉目秀麗" だ。
正直、目が眩んだ。
「…一人でそんなところでひっそり隠れてた理由、当てていいですか。」
「どうぞ。」
隣に立った佐々木くんは直射日光に目を細めて私を見た。いちいち、細かい仕草が様になる。
「…けっこう、女の人に声をかけられたでしょう。」
「え。…当たりです。」
「ほらね。」
「パーティーってやっぱり苦手ですよ。」
「別にパーティーじゃなくても、いつもそうしてたら、女の人はバンバン寄ってきますよ。」
私なんかに構わなくても。
「そうしてたらって」
「その服、一張羅でしょう。しかも割と最近買った。TPOが求められる場とかでは、そればっかり着てる。」
「ああ、理紗さんは超能力者だったんですね。」
「なわけないでしょう。」
「そこまで当てられると怖いですよ。」
あなたは、とてもわかりやすいもの。少なくとも、私には。
これも飲み込む。
そう、彼について知らないことはまだまだあっても、わからないことは、たぶん私にはほとんど無い。
彼の、私への不可解な行動の意味、それ以外は。