世界の淵で君たちと

 彼女は、世にも稀な人魚という存在である。

 東洋のある国では、古来より、人魚の肉を食べると不老不死になるとまで言われるほどの伝説を持っているほどだ。

 人魚は希少な存在であり、同時に強きチカラを有する存在でもある。

 中でも、彼女、アイネイアスは王族であり、一族で三番目に大きなチカラを持っていると言われている。



「でも、アイネイアス様ったら、今日もお勉強、サボリなのよねぇ……」


「全くですわ……っ! アイネイアス様はいずこへ! いずこにいらっしゃるですかっ?!」



 王族たちの住まう海底キチク城に勤めるメイドは、溜め息交じりにそう零した。

 彼女の後ろでは、アイネイアスに人魚史を教えるはずだった教師が、顔を真っ赤にさせて今にも倒れそうだ。

 だがこの光景は、ここ海底キチク城では日常的なものであった。



 人魚姫、アイネイアスは、実に遊び好きで好奇心旺盛な少女だった。

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