世界の淵で君たちと

「あーあ、ばっかみたい! 何をみんなしてあんなに騒いでいるのかしら」



 先日探検した難破船の中から発掘した、お気に入りの人間のぬいぐるみを胸に抱いて、彼女、アイネイアスはそう呟いた。



 荒い波のような強いウェーブのかかった長い金髪。

 海の底をそのまま映しとったかのような、深い蒼の瞳。

 しなやかな体は多少、凹凸に乏しい気がしなくもないが、決して醜いものではなく、むしろ美しいと称されるものだ。

 そして、人魚の証ともいえる魚そのままの下半身は、綺麗な桃色の鱗におおわれている。


 
 そんな人魚姫、アイネイアスは今、海底キチク城の最上階に位置するテラスの、すぐ下に居た。

 そこは、上のテラスからは身体を倒さなければ見ることはできず、下からは壁の色に同化して見えるという、アイネイアスの絶好のサボリスポットだった。

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