恋のお試し期間



「やっぱ気づいてなかったんだ」
「え?裕樹あんた知ってたの。やっぱドッキリ?」
「何ドッキリって。あんな分かりやすいアプローチされて気づいてないとか」

ただ手を繋いで家まで送ってもらった里真。
それだけで心臓が痛いくらい跳ね上がり顔は真っ赤。
テンパった姉はリビングでゲーム中の弟に相談してみた。
彼は驚く事なくいまさら?という顔で淡々と冷静に答える。

「何時から?最近のこと?」
「結構昔からだよ。佐伯さん、姉貴見る目だけ違うから。あからさまに。
姉貴がやたら女子にイジメ喰らったのそれもあったの気づいてないよな」
「うん。気づいてない」

てっきりデブでとろかったからそれで無視とか悪口とか言われているのかと。
男女関係無くからかわれたから、もう一緒くたになってて分かってなかった。
そこまで深刻に考えてなかったのもあるけれど。
弟に言われて愕然。まさかそんな裏があったなんて。

「で?やっと佐伯さんと付き合うんだ」
「まあ…お試しで」
「姉貴、鏡で自分の顔見てこいよ。試す顔かよ。相手佐伯さんだぞ?」
「違うよ。佐伯さんが試すの。ほら、理想と現実って一致しないじゃない?」

里真にいだく理想なんて無さそうだけど、それにあのニュアンスだと
里真が佐伯を試すかのようだったけれど、絶対そんなのあり得ない。
ダメ女の自分とは程遠い所に居る不釣合いな人。
それが行き成り告白されて付き合おうとか。どんな急展開だ。怖いくらい。

「今まで散々姉貴のみっともない姿晒しておいて今更それはないと思うけど」
「でもほら。わかんないじゃない。やっぱやーめたってなったら。ねえ?ねえ?」
「それはな」
「あ…それともこれは夢かも?ねえ殴ってもいい?」
「え。俺が殴るんじゃなくて?」
「何でそうなる」
「まあとにかく。頑張ってお試しされろよ」
「……自信ない」
「大丈夫。皆そこはわかってるから」
「……ほんと優しい家族だね!」
「リセット押すなよーーー!!」


今もう彼と付き合ってるってことでいいの?

どうしよう、今日は眠れない。

明日からどんな顔で彼に会えばいい?





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