恋のお試し期間
「さて。明日さっそく着てみるかな」
「…すいません、なんか。微妙で」
「俺は気に入ったよ?この奇抜な色使いとか。ありえない所にメッシュとか」
部屋に到着し一息入れながらさりげなく今日買った服の入った袋を見る。
分かってるのになんで買ったんだろう。彼はオシャレだから分かったはずなのに。
からかうつもり?にしては自分へのダメージも結構あるような。
「慶吾さん分かっててわざと買ったでしょ」
「どんな服でも買ったよ。思ってたよりは普通でちょっと安心」
「……」
「というのは冗談だからそんな怖い顔して睨まない」
佐伯が夕飯の準備を簡単に済ませ2人テーブルに座る。
里真も料理を振舞うと言ったけれど彼氏の方が上手過ぎると
どのタイミングで作ればいいか分からなくて困る。
「…慶吾さん?」
「食べてる里真もほんと可愛い。俺幸せだな」
「そ、そんなじろじろみたら食べ難いですよ」
「何でだろうね」
「え?」
「食べてるだけなのに。…すごいその気になってくる」
「ええ!?」
「あははは」
「も、もう。またからかって」
爽やかに笑ってるけど、こっちは緊張して困る。
「はは、ごめんごめん。今のは冗談じゃないからね。休憩したら風呂行こう」
「……えぇええ」
ただ黙々とパスタを食べていただけで全然色気のある空気じゃなかったのに。
そんな空気まったくなかったのに。いきなり?
男の人ってそういうものなの?
里真は引きつった顔をするが佐伯は少し頬を赤らめまだ此方をみていた。
男って分からない。いや、分からないほうが幸せかもしれない。
「何時までも恥かしがらない。ほら、体洗うから座って」
「じ、自分でしますから!慶吾さん早くお風呂入って!」
やっぱり冗談じゃなかった。
ご飯を食べて、休憩をしたら普通にお風呂へ行こうと言われた。
正式なカップルになった、ということはそういうコトもするわけで。
自分のだらしない体を明るい中で見せるのも辛いというのに。
彼氏の体を見るというのも凄い困るというか。
何処をみたらいいのかというか。
ああ、パニックになる。
せめて腰にタオルを巻いて欲しい。里真は恥かしいので巻いている。
「里真が座らないと駄目だよ。ほら。ここだよ」
「いやーーーむりーーーーーー!!」
「そんなに嫌?…そんなに、…俺が嫌?」
「慶吾さんが嫌なんじゃないです。恥かしいから無理なんですいやなんです!」
「何も恥かしくなんかないよ。じゃあ、電気を消すから。それならいい?」
「……は、はい」
うっかりはいなんて言ってしまったけど激しく後悔した。
幾ら真っ暗とはいえ彼に体を洗われるのには変わりない。
電気を消し真っ暗になった風呂場はたしかにさっきよりは良い。
けど、どうしよう。
お風呂入る前からもうすでに熱くて茹だってしまいそうなんですけど?