恋のお試し期間


熱さとパニックで倒れそうなんですけど。

いや駄目だ、今倒れたら全裸にタオル1枚です。

普通に起きているよりも醜態をさらします。



「さあ里真これは取ろうね」
「あっ」

でも体を守っていた唯一のタオルを取られ裸にされた。
そのまま彼に手を引かれ椅子に座る。

「…大丈夫今ここではしないよ。その分ベッドでいっぱい愛してあげるから」
「……ぁい」
「はは。どうしたの?声震えてる。まだ恥かしい?」
「だって私なんか…その」

暗くても光が無いわけではないし慣れてきたらそれなりに見える。
目の前にタオルを持った裸の佐伯が居る。何もしないと言われても
それで緊張しないわけ無い。それに、この後はベッドへ行くのだし。

こんな時、

三波だったらきっとすんなりと彼と違和感なくお風呂に入るのだろうか。
想像するのはいやだけど。でも、考えてしまう。比べてしまう。
私は何でこんなにも自信がないんだろう、嫌がってるみたいだ。

彼に全部捧げると決めたくせに。

「君はよく他の女性を引き合いにだすけど。俺にはそれよく分からないよ」
「…え?」

俯いて震えている里真の頬をそっと撫でる佐伯。
声は優しいまま。手のぬくもりも暖かい。

「君は本当に可愛い子だよ?言葉じゃ伝わらないかな?……あ。いけない」
「な、なに?何ですか!?」
「俺……。ほら」

そのつもりは無かったのに彼の視線をつい追いかけてみてしまう。
まだちゃんと見た事がなかったのに。こんな間近で見るなんて。

「きゃああああああああああああああああああああああああ!」
「里真声が大きいここ風呂だから。響くよ凄く。落ち着いて」
「ああああああ………、すいません」

パニックになって暴れる里真を抱きしめて落ち着かせる佐伯。

「…許してやらない」
「え」

耳元で聞こえた声は優しい彼氏の声ではなかった。
まるで知らない人みたいな冷めた低い声。

「2度も俺見て拒絶するとか、無いだろ。許して貰えると思う?」
「け…慶吾さん。怒って」
「怒らせてる自覚はあるんだ」

顔を見るのが怖い。でも気になって恐る恐る顔を上げた。



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