恋のお試し期間



「じゃあ俺が質問するから素直に答えてくれる?」
「はい」

揉んでいた里真の足を自分の膝に乗せ佐伯は視線を里真に向ける。
まっすぐに見つめられて恥ずかしいけれど
ここでも逃げたらそれこそ怒られそう。

「里真さ、俺とえっちするの嫌い?」
「え」
「もし嫌いだったら俺は無理強いをして居る訳だから改めるよ」
「……嫌い、ではないです」
「そう。じゃあ。もう1つ」
「はい」
「ちゃんと最後までイけてる?」
「……は、はい。…たまに、ちょっと、何かなーって事があるくらいでほとんどは」
「そっか。やっぱり十分じゃなかったんだ。痛かったら言うんだよ?」
「毎回じゃないし、私もうそんな気にしてもらうような歳じゃ」
「歳は関係ない。里真。俺に機会をくれない?きっと2人の時間が足りないんだよ。
お互いに仕事してて休みもあまりかち合わないから。もっと一緒に居よう」
「……」
「俺は自営だから休みは取れる。問題は君なんだけど」
「分かりました。3日くらい…休んでやります!」
「ありがとう。ごめんね」
「…いえ。私が慣れてないから」

えっちで愛されている実感を得るとか。きもちいいとか。

よろこびとか。そういうのがどうしても気薄で。

実はこっそりサイト検索したり友人に相談したりしていた里真。
彼を受け入れたはずなのにまだ何処かで恥ずかしがっているのか。
それとも元々そんな感じる体じゃないのかもしれない、なんて悩んだ。

彼にバレる前に直すつもりだったのに結局最初からばれていたらしい。

「体の相性もいい方が君もいいよね」
「そんなに重要ですか?」
「君は重要じゃない?」
「2人で一緒に居て、キスとか…してても、十分幸せ…かな」

愛を感じてない訳じゃなくて、何もソレをしなくても十分だと思ってしまう。

それじゃダメなんだろうか。

ダメだよね。

「可愛いね里真は。でも、それってなんだか拒まれてるみたいで嫌なんだよね。
今更えっちの内容なんてどうでもいいんだけど。俺に全て任せて欲しい。
安心してほしい。ただの我儘なんだろうけどね。里真ってそういうの受け付けない方?」
「……よく、分かりません」
「そっか。わかった。じゃあ今の全部無しでいいから」
「そんな」
「君に押し付ける事はしないって言ったからね。しないよ。相性なんてどうでもいい。
一緒に居られたらそれでいい。ね。里真」

不安そうな顔をする里真にまたにっこりと笑うけれど。
それが申し訳ないような、恐ろしいような。怖いような。

「……」
「怒ってないよ。お互いの意思を確認しただけだから。
里真は俺と居て楽しいと思ってくれてるって分かったから良かった」
「今日はお泊りしても」
「あれ。俺そのつもりで居たんだけど違ったの?ごめんねまた勝手に」
「じゃあ。抱っこしてベッド連れて行ってくれたら一緒に寝る」
「何その可愛いの。もちろんお連れしますとも」

佐伯は立ち上がり里真を抱き上げる。
重くてごめんなさいと言ったが彼は笑っているだけだった。
寝室までちゃんと運ばれてベッドにも優しく寝かされた。


「…でもそれじゃ慶吾さんは嫌なんだよな。きっと」

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