恋のお試し期間
いい雰囲気で抱っこしてもらいベッドに入ったはいいが
タイミング悪く佐伯の携帯が鳴って彼はリビングへ戻り、
里真は一人ベッドに座っている。
部屋の主が居ないのに自分だけが寝転んでいるのも悪いだろうし。
寝たらそのまま寝てしまいそうで怖い。
「ごめんね。知り合いから電話で。あ。もちろん仕事上のね?」
「分かってますから」
戻ってきた佐伯が微笑んで、ベッドに座って里真の隣りに座る。
「眠そうだね。それもそうか、今日は忙しかったんだから」
「補佐なのでそこまで忙しい訳じゃ」
「でも疲れた顔してる。…俺に君を癒やす力があればなあ」
「慶吾さんの料理大好きですよ。美味しいから力入るし」
「でも俺自身は美味しくないよね」
「……」
「あ。ごめん、今のは別に君を責めたワケじゃないから。その、そう。
軽い下ネタということで笑って流して」
「だ、だい、じょうぶですよ!慶吾さんは美味しいから!ほんと美味しいから!」
「……う、うん。そう?ありがとう…」
あれ、フォローしたつもりだけど空気が悪くなっちゃった。
お互いに気まずくなってちょっと沈黙タイムが流れてしまう。
いい雰囲気にはならなくていいから、普通に笑って話せるようにしないと。
里真はモジモジしながら糸口を探す。
「あ。そ、そうだ。旅行。3日も一緒に居られるなら旅行とかいいですよね!」
「そうだね。里真が行きたい場所でいいよ。俺は何処でも」
「私も美味しいものがあったらそれで」
「えっと。今の美味しいは料理?俺?どっちかな」
「……ど、どっちも!」
やばい、全然笑って流せる話じゃない。
凄い墓穴を掘っているし顔が熱くなってきた。
「そっか。よかった。じゃあ、里真さんを口説くツアーでも組みましょうか」
「え。あ。…そ、……そんな」
「俺としては次のお試しをお薦めしたい訳だしね」
「次?え?でももう私」
「今までは彼氏のお試しだったでしょう?」
「は、はい」
「その次っていったら?」
「……え。え。と。え?」
「里真ちゃんのリアクション可愛いね」
軽いパニックでおどおどしていたらクスっと笑う佐伯。
からかわれた?今のは冗談?それとも本気なの?
彼氏のお試しから次って言ったらもうそれは。
その。
旦那さましかないんじゃないですか???
「慶吾さ」
佐伯は言葉を続けようとした里真の唇をキスで塞ぐ。
「……さ、もう横になろう。電気も消すね」
「……はい」