恋のお試し期間
「そっかそっか。日野ちゃんまたダイエット始めたんだ」
「そうだよ高橋。あんたも今はまだ現状維持出来てるけど何時また戻るか」
「いやーマジきついわ。彼女に愛想つかされるわ」
「そうそう。あの頃の写真は封印したもんね」
「絶対維持しねえとな」
週末の居酒屋。三波は違うけれど、懐かしい元デブ仲間たちと久しぶりの飲み会。
話の内容は近状報告とやっぱり体重の事。皆ちゃんと現状維持をしている様子。
若干ふっくらしてしいまったのは里真だけという悲しいお知らせ。
でもダイエット中だからこれから巻き返すと息巻いておいた。
それを気にしてか皆サラダや油っけのない物などヘルシーなものばかり選ぶ。
飲み物も里真は烏龍茶にした。流石にみんなはそこは各々好きな酒になったが。
「でもさ、この子あの慶吾さんアタックしようってがんばってんだよ」
「ええ!?」
「ちょ、ちょっと。三波」
「凄いな。さすが我等がエース日野っち」
「でしょ?」
豆腐を突きながら話を聞いていたらいきなり佐伯の話をされてオドオドする里真。
佐伯にアタックしているというか、されているというか。
それにもう自分の中で彼と交際したいと言うGOサインが出ていて。
でもこの場で「実は付き合おうって所まで来てるんです」とは言い出せず。
「そ、…そう、なの。へへへへ」
苦笑いして場を濁す事にした。
「でも彼女居るんじゃないの?佐伯さんったらさあの佐伯さんだろ?」
「そうだよ」
「日野っち。ふられても俺が優しく抱いてやるぜ」
「あー、あんたは要らないわ」
「速攻ふられてんぞお前」
「ひどいよー痩せたのにー」
盛り上がる面々。里真は話がそれてくれた事に感謝しつつ。
ついつい美味しそうなから揚げを1個2個食べてしまった。
それからまた別の話題で盛り上がり。泣いたり笑ったりで。
このメンツとは男女関係なく苦楽を共にした仲間だから
会話も楽しくてあっという間に時間が過ぎる。
「ねえ、二次会は慶吾さんのお店にしない?」
「三波様は相変わらずドSですなあ」
「学生時代ダイエット中の俺等の前でチョコレート一袋食べたつわものだもんな」
「はい決まり。移動移動」
「ま、まって。お店はほら忙しいから。きっと席も埋まってて入れないよ」
「そんなの分かってる。だから、既に予約済み」
「ええええ」
最初から仕組んでたの?呆然とする里真を他所に皆乗り気で。
あっという間に会計を済ませ店を出て佐伯の店へ向かう。
途中何度も里真はやめようと訴えてみるが誰も聞いてはくれない。
アタックしている相手の店だから緊張してるんだろうくらいの気分で。