恋のお試し期間
からかってますよね?
なんとなく、本当になんとなくだけど。
体が重たくなった気がする。気のせいだと思うけど。
でも一応念の為にそぉーっと下着姿になってもう1度体重計に乗ってみる。
結果は数ミリかわっただけ。今度は全裸でやってみるか。
「やっぱ太ってきたのかな。…むくみ?それとも便秘だから…うーん」
「普通に太ってきたんだろ?油断しすぎなんだ」
「裕樹!勝手に見ないでよ!」
そんな姉の後ろに立っている弟。下着姿なのにノックもなしに脱衣所に入るなんて。
慌てて服を着るが相手は淡々として自分の着替えとタオルを傍においた。
「俺風呂入りたいだけ。姉貴普通に邪魔」
「なんであんたはそんな昔から細いのか」
「知らないよ。ほら退いて」
「姉さんに冷たい弟なんだって愛しの美玲ちゃんに言っちゃおう」
「怒るぞ」
彼女の名前を出されてキレ気味な弟に追い出される形で廊下に出た里真。
最近ちょっと油断して太り始めたのならダイエットをまたしたほうがいいだろうか。
お腹の肉を掴んでため息。もうあの頃に戻るのは嫌だ。
物心つくまえからおデブちゃんで、そのまま高校生になるまで突き進み
オシャレにも自分にも興味がなくて思いっきり太っていた。
馬鹿にされ笑われてもあの頃は特に何も感じてなかった鈍感さも
一度普通の体型というものを知ってしまうと地獄だと思える。
「里真?」
「ねえお母さんから見ても私ちょっとヤバめ?」
「何がやばいのか知らないけど。そこのお煎餅とってちょうだい」
「はいはい」
「あんたも食べる?」
「やめとく」
それが初めての恋というものをして必死にダイエットしてどうにかこうにか
痩せる事ができた。お陰で自分に自信がついたしある程度のオシャレにも目覚めた。
だけどその人は違う学校の人だったから、勇気を出してあがいてはみたものの
結局どうにもならず、でも別の人と付き合った。
代わりといっては言葉は悪いし短い期間ではあったけれど、
もしかしたら太り始めるとふられるフラグが立つのだろうか。
なんて馬鹿なことを考えてしまう。