恋のお試し期間



自分からお泊りをしておいてそういう展開を全く予想してなかった訳じゃない。
本心では優しい彼に応えたい。

けどその先へ進むにはかなり消極的な里真。

その理由はわかってる。

「ごめん。俺が余計なこと言ったから、せっかく泊まりに来てくれたのに」
「……慶吾さんは余裕、ありますよね。やっぱり…」
「えっ?……っと。まあ、お互い大人だし、ね」
「大人」
「それとも気になる?俺も全く気にしないって訳じゃないけど、でも今は俺の事
見てくれてるんだしね。これからもそうであるように努力する。じゃダメかな」

佐伯の言葉にだんだん表情が暗くなっていく里真。

「わ…私…、…まだ、その…経験……無くって」
「え」
「だから…怖くて…」
「そう、なんだ」
「今までそういう雰囲気になった事はあったけど。何となくで回避してて」

最初の恋はまだ学生で奥手すぎて何も発展せず。
大人になって、この告白に成功したら彼に全てを捧げる!と宣言し
あれやこれやと理由をつけてこの歳まで来てしまった。

周りは当然経験アリだと思って話を進めてくるけれど。
里真は素直に言えなくて怖くて知ったかぶりで頷いているだけ。

知識としては気持ちがいいらしいが怖いのが大きい。

「抱きしめるのはいい、よね」
「…はい。……自分の裸に自信なくてすいません、ほんと」

努力して痩せたのに。でも最近またぽっちゃりし始めたから余計に嫌。

「練習、しない?」
「練習」
「行き成り最後まではしないから。少しずつ君に触れていきたいな」
「……」
「それも、怖いかな」

もしここで拒んだらそのまま彼のベッドで眠る事が出来る。平和に。
きちんと話をしたから佐伯は今後気軽に里真に触れようとはしないはずだ。
でも里真は深呼吸を始める。暗い部屋で荒い深呼吸の音が何度か響き。

「だ、大丈夫ですできます」
「声裏返ってるけど…無理しないでいいよ?俺、そこまでは」
「頑張って大人になります」
「い、いや。ごめん。里真はちゃんと大人の女性だから。そんな勢いで」
「ど、どうしたらいいですか?脱いだらいいですか?で、でもその前に風呂」
「落ち着いて。じゃあ、ここ座って」

テンパりすぎて今にも暴れだしそうな里真を抱き寄せ自分の膝に座らせる佐伯。
まだ何かブツブツ言っている彼女の耳を甘噛みしてギュッと抱きしめた。
里真が落ち着くのをまつ。暫くしてやっと彼女の呼吸が落ち着きブツブツも止まる。


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